映画「日本のいちばん長い日」(2015年版)

これを書かずには、2023年は終われません!
映画「日本のいちばん長い日」。
今年の4月に出さしてもらった舞台のために、いろいろな資料にあたっていましたが、この邦画を見返すことがとても多かったです。
テーマはまさに、宮城事件(きゅうじょうじけん)です!
 半藤一利さんの同名著作を映画化したものが1967年版と2015年版で二つありますが、僕がハマったのは2015年版です。
まず、編集が面白いと思いました。一流の演技や音楽を、あえて、シーンによって、容赦なく切っていく。そこで、鑑賞者が一つの感情に浸ることを許さず、時間の経過と共に起こる事象を次々と見せられていく。このスピード感と、浸れないことで生まれる独特の現実感と緊張感が、映画で扱っている主題とも相まって、まるで、8月15日までの一連の経緯を、実際にその場で見ているかのような臨場感を感じさせてくれました。
また、個人的に刺さる俳優さんが多かったのも、書かずにおれない理由の一つです。
阿南陸相を演じた役所広司さん、畑中少佐を演じた松阪桃李さん、
そして、鈴木首相を演じた、山崎努さん!!!!
時にすっとぼけたような言動を見せるかと思えば、
全てを見通したような達観した発言もする、
それらが全て、一つの人間の言動として説得力のある役として響いてくる。
強いてこの映画の気になる点を挙げるとすれば、本木さん演じる昭和天皇が、あまりにも知的で理性的で聡明で、カッコ良すぎるということ。あんな賢明な君主なら、太平洋戦争には突っ込まなかったんじゃないかと思ってしまいますが、それでも突っ込んでしまうような時代だったと映画としては訴えたいんじゃないかと思います。
そして、忘れず触れたいのが、メインテーマとなる音楽です。
富貴晴美さんの音楽がとても好きです。劇中で使用されるときは、4拍子で重々しく奏でています。一方、エンドクレジットでは、まるで昔話を語るような、3拍子のワルツのリズムで淡々と物語を締めくくる、あの感じがとても好きです。
悲劇はワルツと共にやってくる、という言葉を、この映画のエンドクレジットを見る度に思い出します。
つまり、どんなに悲惨な、あるいはドラマチックなことを描いても、しょせんこれは映画であり、フィクションなのだ、という感じがします。
人類の歴史は戦争の歴史と言われるように、
今年は特に戦争について考えさせられました。
僕にとって、今年の感じは、「戦」です。
ロシアとウクライナの戦争も、
結局、第二次大戦後の世界が決して、平和が訪れた世界では無かったということを物語っていると思います。
不安定な情勢が続く世界で、新自由主義に頼って、結果さえ出せば何をしても許容されるという風潮が一層強まっていると思います。
金銭にも宗教にも頼らない、
自分は何のために生きているのか、
こうした哲学や美学が、真に求められるんじゃないか、そう思います。
映画「日本のいちばん長い日」には、極限の状況下で、最後の最後に何を大事にするか、そのせめぎ合いが、とても強く僕に響いてくる作品です。
この作品をもって、この2023年を締めたいと思います。