どれほど、この日を待ったことでしょうか。
歴史的なウィルスの蔓延によって、泣く泣く解散となったあの日。
正直、今回の舞台で、あの日、行き場を失くしてしまった芝居魂が成仏できるかどうかは分かりません。
生の舞台というのは、一期一会。観に来てくれるお客様との出会いもそうだし、何より、共演する人たちとも、まさに、一期一会です。
再会を期待したり、約束しても、思い通りになることの方が少ないと思います。
あの日、別れた皆の思いも背負ってなんて、おこがましいことは言えません。
僕自身も、子どもたちにいっちょ前にカッコつけたことをほざいわわりに、自分自身がその後、こんなに何にもできない日々を送ることになるのか、と現実を受け止め切れない毎日でした。
それでも、この日々を何か、将来の糧にしたいと思い、感染状況が良くなるにつれて、いろいろなことに挑戦させてもらいました。
他団体さんに客演させてもらったときの驚きと誇らしさは、舞台人として一回り大人にしてもらった気がします。傲慢な気持ちを持つなんてもっての他ですが、でも、自分という俳優を、決して安売りしてはいけない、人になんと言われようが、自分は自分だ、という一つの腹を括った舞台人としての立ち方を教わりました。
また、ダンスにも注力しました。ミュージカルに出演する際に、歌って、踊って、演じる、この三つが主な三本柱です。ただでさえ、ひ弱な三本柱の中で、特に、踊ってがヤバいのです(笑)。劇団クリエの講師の先生に加えて、さらに、別のご縁でつながったダンスの先生にも習うなど、自己投資を拡大しました。
そして、僕の中でも一番太い柱にしたい、歌うこと。クリエを通じてご縁のあった、テノールの先生に、ようやく習いに行けるようになりました。毎回のレッスン費、都内への交通費、ダンスに加えて、自己投資を拡大しましたが、今、得るべき技術と身体への知識を、確実に得ているのだと実感しています。
これらの自己投資が、将来の華々しい活躍を約束するものではありませんし、帝劇の主演を張るような大スターになりたい訳ではありません。
僕はただただ、舞台を観ること、舞台をやることが、ただただ好きなのです。
今回のカンパニーにも、参加させてもらえたことが本当に嬉しいです。
宮澤賢治さんという、宇宙のような存在感を持つ相手に、自分の人生経験の全てをかけて、思考を巡らせる楽しさ。
そして、とにかく、作品に対して、共演者に対して、真摯に、切実に、そして楽しそうに向き合う子どもたち(と大人たち)。
稽古場で過ごす一瞬一瞬、みんなの出す歌声や踊り、台詞の一言一言に触れているのが、本当に幸せに感じます。
泣いても笑っても、あと2か月で終わってしまうのが切ないです。
でもだからこそ、共に分かち合える時間を大切にして、本番まで過ごそうと思います。